「社員のために給与を上げたい。でも、会社の経営を考えると大幅な賃上げは難しい……」
そんな悩みを抱えている経営者の方も多いのではないでしょうか。
賃上げには、基本給そのものを引き上げる方法だけでなく、賞与や福利厚生などを通じて社員に還元する方法もあります。
一般的に「第1の賃上げ」は定期昇給、「第2の賃上げ」はベースアップ(ベア)を指す形で説明されることがあります。定期昇給は勤続年数や評価などに応じて給与を上げること、ベースアップは賃金表などを改定し、基本給の水準そのものを引き上げることです。
そして近年、これらに加えて注目されているのが「第3の賃上げ」という考え方です。
第3の賃上げとは?
第3の賃上げは、「福利厚生を活用して社員の生活費の負担を軽減し、実質的な生活の豊かさにつなげよう」とする考え方です。
例えば、次のような取り組みが挙げられます。
| 取り組み | 社員にとってのメリット |
|---|---|
| 食事補助 | 毎日の食費負担を軽減できる |
| 社宅・住宅支援 | 家賃などの住居費負担を軽減できる |
| 育児・介護支援 | 家庭で必要な費用や負担を軽減できる |
| 健康づくり支援 | 運動や健康管理に取り組みやすくなる |
| 資産形成支援 | 将来に向けた資産形成を進めやすくなる |
| レジャー・施設利用の割引 | 休日や余暇を楽しむ費用を抑えられる |
例えば、食事補助によって毎日の昼食代を抑えられれば、給与額が変わらなくても、家計に余裕が生まれる可能性があります。
このように、給与を増やすことだけでなく、社員が使えるお金を増やしたり、生活に必要な支出を減らしたりすることも、社員への還元方法として考えられています。
なお、「第3の賃上げ」は福利厚生を活用した取り組みを表す考え方であり、法律上の独立した賃金制度ではありません。また、福利厚生の税金や社会保険料の扱いは制度ごとの要件によって異なります。

なぜ今、第3の賃上げが注目されているのか?
背景にあるのは、物価上昇と人材確保の難しさです。
物価が上がり、社員の生活を支える必要がある
食品や日用品、光熱費など、日常生活に必要な支出が増えると、給与が上がっても生活が楽になったと感じにくいことがあります。
一方、企業側も原材料費やエネルギー費、人件費などの負担が増えています。
社員の生活を支えたいと思っても、継続的な給与の引き上げには、経営上の判断が必要です。
そこで、給与の引き上げに加えて、食事補助や住宅支援など、生活費の負担を軽減する福利厚生を組み合わせる方法が注目されています。
ただし、福利厚生は給与の代わりになるものではありません。基本給や賃金水準を適切に確保したうえで、生活を支える選択肢として考えることが大切です。
人材の採用・定着で他社との差をつくる
人材確保が難しい中小企業にとって、給与だけで他社と差をつけることは簡単ではありません。
そのような中で、自社の社員に合った福利厚生を整えることは、採用時に自社の魅力を伝える材料になります。
例えば、若い世代の採用を強化したい企業なら、食事補助や住宅支援、資産形成支援などが候補になるでしょう。
子育て世代が多い企業なら、育児支援や柔軟な働き方の整備が喜ばれるかもしれません。
大切なのは、福利厚生の数を増やすことではありません。
社員が実際に必要としている支援を用意し、「この会社は自分たちの生活を考えてくれている」と感じてもらえることが重要です。

第3の賃上げに取り組む企業のメリット
福利厚生を充実させることには、社員だけでなく企業側にもメリットがあります。
① 採用活動で自社の魅力を伝えられる
求人票に給与や休日だけでなく、食事補助や住宅支援、健康づくり支援などを具体的に記載できれば、働く環境を伝えやすくなります。
特に中小企業では、大企業と同じ条件を用意することが難しい場合もあります。
その中で、自社ならではの福利厚生を整えることは、求職者に選ばれる理由の一つになる可能性があります。
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② 社員の定着や満足度の向上につながる
社員が日常的にメリットを感じられる福利厚生は、会社への安心感や満足度を高めるきっかけになります。
例えば、食事補助は利用するたびにメリットを感じやすく、育児支援は家庭と仕事を両立するうえで助けになることがあります。
ただし、福利厚生を導入すれば必ず離職率が下がるわけではありません。
給与、仕事内容、人間関係、労働時間など、ほかの要素も含めて働く環境を整えることが大切です。
③ 社員を大切にする姿勢を形にできる
「社員を大切にしています」と伝えることも大切ですが、実際に社員が利用できる制度があると、その姿勢が具体的になります。
健康づくり支援を取り入れるなら、社員の健康を気遣うだけでなく、健康に働き続けられる環境づくりにもつなげられます。
福利厚生を通して会社の考え方を伝えることは、社内のコミュニケーションや組織づくりを考えるきっかけにもなります。
どんな福利厚生を選べばいい?
ここまで読んで、「うちも何か始めたいけれど、何を選べばいいの?」と思った方もいるかもしれません。
福利厚生にはさまざまな種類がありますが、流行しているものをそのまま導入する必要はありません。
選ぶときは、次の4つを意識してみましょう。
① 社員が何に困っているのかを知る
まずは、社員の生活や働き方について、どのような負担があるのかを確認します。
例えば、次のような視点があります。
- 食費や住居費など、生活費の負担が大きい
- 育児や介護と仕事の両立が難しい
- 運動不足や疲労など、健康面の悩みがある
- 休日に楽しめる余裕や時間が少ない
アンケートを実施したり、普段の会話で意見を聞いたりするだけでも、ヒントが見つかることがあります。
経営者が「社員はこれを喜ぶはず」と決めるのではなく、実際に働く社員の声を聞くことが大切です。
② 全員が利用しやすいかを考える
福利厚生は、制度があっても利用されなければ十分な効果を得にくくなります。
例えば、オフィス勤務の社員には便利でも、工場や現場で働く社員には利用しにくいサービスもあります。
勤務時間や勤務地、年齢、家庭環境などによって、使いやすい制度は変わります。
導入前に「誰が、どのような場面で利用できるのか」を考えてみましょう。
③ 費用と運用の負担を確認する
福利厚生は、導入時の費用だけでなく、毎月の利用料や管理にかかる手間も確認する必要があります。
中小企業では、担当者がほかの業務と兼任していることも少なくありません。
そのため、費用が安くても運用が複雑な制度より、少ない手間で継続できる制度のほうが合っている場合もあります。
また、税務上の取り扱いや社会保険料への影響は制度によって異なるため、導入前に税理士や社会保険労務士などの専門家に確認しておくと安心です。
④ まずは小さく始め、利用状況を確認する
最初から多くの福利厚生を導入する必要はありません。
例えば、食事補助を試験的に始める、健康づくりの支援を一つ取り入れるなど、小さく始める方法もあります。
導入後は、利用率や社員の感想、費用に対する満足度などを確認し、必要に応じて見直していきましょう。
福利厚生は、導入することがゴールではありません。社員に活用され、生活や働き方の支えになっているかを確認することが大切です。
小回りを利かせられるのもいい点です
第1,2の賃上げと比べ、中身の変更(整体の人、食事補助の協力会社)は比較的しやすいですし、
要望に応えやすいのもいい点です。
導入するまで分からないこともありますが、社員様の声を聞きながら
「何が自社に合うのか」を考える事も働きやすい会社作りに繋がります。
そのコミュニケーションも是非に大切にして欲しいと思います。

健康づくりも、第3の賃上げの選択肢に
第3の賃上げというと、食事補助や住宅支援など、家計の負担を減らす制度をイメージする方が多いかもしれません。
しかし、社員の生活を支える方法は、それだけではありません。
健康づくりを支援することも、社員への還元の一つとして考えられます。
例えば、運動の機会をつくる、健康に関する研修を実施する、身体の不調について相談できる機会を設けるといった取り組みです。
健康づくりの支援は、社員が自分の身体を見直すきっかけになり、健康に働き続けられる環境づくりにもつながります。
もちろん、健康づくりの支援だけで、生活費の負担が直接軽くなるわけではありません。
だからこそ、食事補助や生活支援などの制度と、自社の社員が必要としている健康づくりの取り組みを組み合わせて考えることが重要です。
社員の健康状態や職場の課題に合わせて、無理なく続けられる方法を検討してみましょう。
まとめ
第3の賃上げは、福利厚生を活用して社員の生活費の負担を軽減し、実質的な生活の豊かさにつなげる考え方です。
物価上昇や人材確保の難しさがある中で、給与の引き上げに加えて、社員の生活を支える方法を考えることは、企業にとっても大切なテーマになっています。
取り組みを検討する際は、次の4つを意識してみてください。
- 社員が何に困っているのかを知る
- 全員が利用しやすい制度を選ぶ
- 費用と運用の負担を確認する
- 小さく始め、利用状況を見ながら改善する
大切なのは、福利厚生を増やすこと自体ではありません。
社員が安心して働き、力を発揮できる会社をつくるために、何を支援するべきか。
その視点から自社に合った福利厚生を考えることが、採用や定着、そしてより良い会社づくりにつながっていくのではないでしょうか。
参考リンク
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