健康経営に取り組む中で、よく聞かれる質問があります。
「健康づくりの取り組みをして、実際に仕事の生産性は上がったの?」
健康診断の受診率や運動イベントの参加人数であれば、比較的分かりやすく数値化できます。
しかし、「体調が良くなった」「仕事に集中しやすくなった」「以前より元気に働けるようになった」といった変化は、なかなか数字では表しにくいものです。
そこで活用されているのが、SPQ(エスピーキュー)という評価方法です。
SPQは、従業員が健康上の問題によって、どの程度仕事のパフォーマンスを発揮できていないのかを、1つの質問で簡易的に測定する方法です。
今回は、SPQがどのようにして生まれたのか、どのような特徴があるのか、そして健康経営で感覚を数値化することにどんな意味があるのかを解説します。
SPQとは?
SPQは、英語の「Single-Item Presenteeism Question」の略称です。
日本語では、一般的に「東大1項目版」と呼ばれることもあります。
東京大学の研究チームが、平成27年度の健康寿命延伸産業創出推進事業における取り組みの中で開発しました。
特徴は、1項目の質問によって、プレゼンティーイズムを簡便に測定できることです。
プレゼンティーイズムとは、病気や不調を抱えながら出勤し、業務遂行能力や生産性が低下している状態を指します。
例えば、
- 腰痛が気になって仕事に集中できない
- 睡眠不足で頭が働きにくい
- ストレスによって判断力が落ちている
- 体調不良で作業のスピードが上がらない
- 目の疲れや肩こりで仕事に集中できない
といった状態です。
欠勤しているわけではないため、外から見ると「出勤して普通に働いている」ように見えるかもしれません。
しかし、本人の中では本来の力を発揮できていない。
このような見えにくい生産性の低下を、本人の感覚をもとに数値化するのがSPQです。

SPQはどのようにして生まれたのか
SPQが開発された背景には、健康経営の効果をどのように評価するかという課題がありました。
健康経営では、健康診断の受診率や運動習慣の改善など、さまざまな指標を確認します。
しかし、それらが最終的に、
「仕事のパフォーマンスにどう影響したのか」
「会社全体の生産性にどうつながったのか」
という点は、簡単には分かりません。
そこで、健康状態と仕事のパフォーマンスの関係を、できるだけ簡単に測定できる方法が求められました。
SPQは、こうした背景から開発された評価方法です。
その後、経済産業省の健康経営度調査でも、プレゼンティーイズムの測定方法の選択肢の一つとして扱われるようになりました。
現在では、健康経営に取り組む企業が、従業員の健康状態と仕事のパフォーマンスの関係を確認するために活用しています。
SPQの大きな特徴は「1問で測定できる」こと
SPQの大きな特徴は、何十問もの質問に答える必要がなく、1つの質問で測定できることです。
一般的に、従業員アンケートは質問項目が多くなるほど、回答する側の負担が大きくなります。
質問が多いと、
「またアンケートか」
「回答する時間がない」
「途中で面倒になってしまう」
ということも起こりやすくなります。
一方、SPQは1項目で測定できるため、比較的短時間で回答できます。
そのため、定期的に実施しやすく、健康経営の取り組みを継続的に確認するうえで使いやすい方法です。
健康経営は、一度取り組んで終わりではありません。
現状を確認する。
課題を考える。
対策を実施する。
その後の変化を確認する。
そして、また次の対策を考える。
このPDCAを回すためには、評価方法そのものが継続しやすいことも重要です。
SPQは、簡易的に測定できるからこそ、継続的な確認に向いていると言えるでしょう。
大規模法人でも活用されている
SPQは、中小企業だけで使われているわけではありません。
経済産業省が公表している健康経営度調査の資料では、プレゼンティーイズムの測定方法としてSPQが選択肢に含まれています。
2024年度の健康経営度調査では、プレゼンティーイズムの測定方法としてSPQを使用している法人が53%となっており、複数ある測定方法の中で最も多く使われていました。<Cite refs={[“turn2search12”]} />
つまり、SPQは特別な一部の企業だけが使う方法ではありません。
大規模法人を含め、健康経営の効果を確認するための方法として、広く採用されている評価方法の一つです。
ただし、すべての企業がSPQを使っているわけではありません。
WHO-HPQやWFun、WLQなど、ほかの測定方法を使用している企業もあります。
大切なのは、「必ずSPQを使わなければならない」ということではなく、自社の規模や目的、継続しやすさに合った評価方法を選ぶことです。
SPQで何が分かるのか
SPQでは、健康上の問題によって仕事のパフォーマンスがどの程度低下しているかを、本人の感覚から確認します。
例えば、ある社員が、
「以前と比べて、体調の影響で仕事の力を十分に発揮できていない」
と感じている場合、その程度を数値で表します。
この数値は、本人の主観に基づくものです。
そのため、SPQだけで仕事の成果や会社の売上を直接測定できるわけではありません。
しかし、主観だから意味がないということではありません。
むしろ、本人にしか分からない、
- 集中しにくさ
- 疲れやすさ
- 判断のしにくさ
- 仕事の進めにくさ
- 体調によるパフォーマンスの低下
を把握できることに意味があります。
健康診断では問題が見つからなくても、本人は「何となく調子が悪い」と感じていることがあります。
そのような見えにくい変化を、継続的に確認できるのがSPQの役割です。

「成果が分かりにくい」からこそ、数値化が大切
健康経営の取り組みは、すぐに成果が出るとは限りません。
例えば、ストレッチを実施したからといって、翌日から会社の売上が大きく伸びるわけではありません。
健康教育を行ったからといって、すぐに全員の生活習慣が変わるわけでもありません。
健康経営の効果は、次のような段階を経て表れることがあります。
- 健康について知る
- 自分の状態に気づく
- 行動を少し変える
- 体調や生活習慣が変わる
- 仕事中のパフォーマンスが変わる
- 組織の活性化や生産性につながる
このように、最終的な成果が表れるまでには時間がかかります。
だからこそ、途中の変化を確認することが重要です。
「社員の健康意識は変わったか」
「体調の自己評価は改善したか」
「仕事中の集中しやすさは変わったか」
「健康上の理由で力を発揮できない状態は減ったか」
こうした変化を数値で追うことで、取り組みの方向性を考えやすくなります。
数字は、取り組みの成果を判断するためだけに使うものではありません。
次に何をすればよいかを考えるための材料として使うものです。
SPQは「個人」の生産性評価ですが、定点観測なのでどうしてもバラツキもあります。
例えば「年明けに取ると低い」などもざらです。
意識しながら、かつ意識し過ぎないバランスも非常に重要となっています。
企業ストレッチとは
大阪府松原市を拠点にする企業ストレッチは、
「健康」を「組織の活力」につなげる、企業向けの健康経営をサポートする会社です。
ヘルスケア研修・体操教室・コンディショニングサポートなどの運動プログラムから、
健康経営優良法人の認定サポートまで、導入から定着・内製化までしっかり伴走。
「健康にイキイキと働ける職場づくり」をお手伝いします。
SPQの数値だけで会社を評価しないことも大切
SPQは便利な評価方法ですが、数値だけを見て判断するのは避けた方がよいでしょう。
例えば、SPQの数値が高かったとしても、その原因が必ずしも同じとは限りません。
腰痛や肩こりなどの身体的な不調が原因かもしれません。
睡眠不足や生活習慣が関係しているかもしれません。
仕事量や人間関係、職場環境が影響している可能性もあります。
そのため、SPQの結果を見たときには、
「数値が高いから、この人は仕事ができない」
と評価するのではなく、
「何がパフォーマンスの低下に関係しているのだろうか」
と考えることが大切です。
SPQは、人を評価するための点数ではありません。間違っても、攻める武器になってもいけません。
職場の健康課題を見つけ、改善策を考えるための指標です。
健康経営では「小さな変化」を見逃さない
健康経営を進めるうえで、最初から大きな成果を求めすぎると、取り組みが続きにくくなることがあります。
例えば、
「社員全員の健康状態を大きく改善しよう」
「生産性を一気に向上させよう」
と考えると、成果が出ないときに取り組み自体をやめたくなるかもしれません。
しかし、
「腰痛を感じる社員が少し減った」
「仕事中に疲れを感じる人が減った」
「健康について話す機会が増えた」
「相談しやすい雰囲気ができた」
という小さな変化も、会社づくりにおいては大切です。
SPQのような簡易的な指標を活用すれば、こうした変化を継続的に確認できます。
健康経営は、目に見える大きな成果だけでなく、日々の小さな変化を積み重ねていく取り組みでもあります。
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まとめ
SPQとは、1つの質問によって、健康上の問題による仕事のパフォーマンス低下、つまりプレゼンティーイズムを簡易的に測定する方法です。
東京大学の研究チームによって開発され、現在では健康経営に取り組む企業の評価方法として活用されています。
SPQの特徴は、
- 1問で簡易的に測定できる
- 従業員の負担が少ない
- 継続的に実施しやすい
- 仕事中の見えにくい不調を数値化できる
- 健康経営のPDCAに活用できる
という点です。
健康経営の成果は、売上や利益のようにすぐに見えるとは限りません。
だからこそ、社員の感覚や実感を数値化し、少しずつ変化を確認していくことが大切です。
数字は、社員を評価するためのものではありません。
「今、会社の中で何が起きているのか」
「どのような支援が必要なのか」
「次に何を改善すればよいのか」
を考えるための手がかりです。
健康経営を一度きりのイベントで終わらせず、継続的な会社づくりにつなげるためにも、SPQのような評価方法を上手に活用していきましょう。
参考リンク
SPQとは|東京大学 SPQ公式サイト SPQの使用と参考値|
企業ストレッチとは
大阪府松原市を拠点にする企業ストレッチは、
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