筋肉を大きくしたい。そう思ったら、ただ毎日筋トレをすればいいわけではありません。
筋肉に刺激を入れて、負荷をかけて、しっかり栄養をとって、休む。
そして、「どんな身体になりたいのか」という目標を決める。
実はこれ、組織の成長にもよく似ています。
会社も、ずっと同じことを繰り返しているだけでは大きく成長しません。
新しい刺激が必要で、時には大変な仕事を乗り越える必要があります。
その後には、成長するための「栄養」も必要です。
さらに、「自分たちはどこを目指すのか?」という目標も欠かせません。
今回は、理学療法士として身体を見てきた視点から、筋肉の成長と組織の成長を重ねながら考えてみます。
① 新しい刺激で強くなる
【筋肉だと】
筋肉は、いつも同じ負荷をかけているだけでは、なかなか大きく変化しません。
身体には「適応」という仕組みがあります。普段より少し強い刺激が入ると、
「この負荷に耐えられる身体にならないといけない」と身体が適応していきます。
筋力トレーニングであれば、重量を増やしたり、回数を増やしたり、動作の難易度を上げたりする。
いわゆる「過負荷」の考え方です。もちろん、いきなり限界まで追い込めばいいわけではありません。
今の自分にとって適切な刺激を、少しずつ高めていく。これが成長につながります。
【組織だと】
会社も同じです。毎年まったく同じ仕事、同じやり方、同じ考え方だけでは、大きな変化は起こりにくい。
だからこそ、
新しい仕事に挑戦する。
新しい商品を作る。
新しい顧客を開拓する。
新しい技術を取り入れる。
若手に仕事を任せてみる。
今までやっていなかったことに挑戦する。こうした「新しい刺激」が組織にも必要になります。
もちろん、挑戦すれば失敗することもあります。でも、失敗したからといって必ずしもマイナスではありません。
筋肉も、負荷をかけたからこそ適応して強くなります。組織も、挑戦したからこそ見える課題があります。
大切なのは、「挑戦したこと」を次の成長につなげられるか。ということです。
会社を強くしたいのであれば、日々、挑戦。これが一つのポイントになります。

② 痛みやしんどさを乗り越えた後に、大きくなる
【筋肉だと】
筋力トレーニングでは、普段より強い負荷をかけることで、筋線維に微細な損傷が生じます。
その後、身体が修復・適応することで、以前よりも強い状態に近づいていきます。
これが一般的に「超回復」と呼ばれる考え方です。ただし、ここは誤解してはいけません。
「筋肉は壊せば壊すほど大きくなる」わけではありません。
負荷が大きすぎたり、回復が足りなかったりすると、ケガや慢性的な疲労につながります。つまり、
刺激 → ダメージ → 回復 → 適応という流れが重要なのです。
【組織だと】
組織にも似たようなことがあります。例えば、
「大きな案件をチームでやり切った」
「今まで経験したことのない仕事に挑戦した」
「会社として厳しい時期を乗り越えた」
「部署間の問題をみんなで解決した」
そんな経験は、社員一人ひとりにとって大きな負荷になります。
正直、しんどい。忙しい。意見がぶつかる。うまくいかない。
それでもチームで乗り越える。すると、その経験が、
「自分たちは、これだけのことができる」という自信になります。
そして、次に同じような問題が起こったとき、
「前も乗り越えたから、今回もいける」という組織の力になっていきます。
これも一種の「適応」です。ただし、ここでも大切なのは、
しんどければいいわけではないということ。
毎日残業。人手不足。休めない。相談できない。失敗すると責められる。
そんな状態を続けても、組織が健康的に強くなるとは限りません。
筋肉と同じで、負荷と回復のバランスが必要です。
「大変だったけど、みんなで乗り越えた」と感じられる経験と、「ただただ苦しかった」
という経験は、同じ負荷でも意味が違います。
だからこそ、会社としては「挑戦させる」だけではなく、挑戦した社員が回復できる環境をつくることも重要になります。
③ 成長に変えるためには「栄養」が必要
【筋肉だと】
筋トレをしているのに、食事をほとんど取らない。そして毎日トレーニングをする。
これでは、身体を大きくするどころか、回復が追いつかなくなる可能性があります。
筋肉の材料となるたんぱく質をはじめ、エネルギー源となる炭水化物、脂質、ビタミン・ミネラルなど、身体が回復・適応するための栄養が必要です。
そして、もう一つ重要なのが休養です。つまり、トレーニングだけでは筋肉は成長しない。
刺激を入れた後に、身体が回復・適応できる条件を整える必要があります。
【組織だと】
会社にも「栄養」が必要です。では、組織にとっての栄養とは何でしょうか?給料だけではありません。
例えば、
- 必要な人員
- 十分な休息
- 教育・研修
- 必要な情報
- 上司からのフィードバック
- 周囲からの承認
- 相談できる環境
- 新しい知識や経験
- 自分で考えて行動できる裁量
こうしたものも、社員や組織が成長するための「栄養」と考えられます。
仕事という負荷だけをどんどん増やして、「もっと頑張れ!」「もっと挑戦しよう!」
と言っているだけでは、組織はいつまでも成長し続けるわけではありません。
むしろ、負荷に対して回復や支援が追いつかなくなると、
疲弊する
モチベーションが落ちる
体調を崩す
休職する
退職する
ということにつながる可能性があります。
これは筋肉でいう、「刺激を入れ続けているのに、回復が追いついていない状態」に少し似ています。
だから健康経営を考えるときにも、「社員にもっと頑張ってもらう」ではなく、
「社員が頑張った分、きちんと回復し、成長できる環境になっているか?」
という視点が重要になります。

④ 目標がなければ、どこまで成長すればいいのか分からない
【筋肉だと】
筋トレを始めるとき、「とにかく筋肉をつけたい!」だけでは、実は目標として少し曖昧です。
どんな身体になりたいのでしょうか?
ゴリゴリのマッチョ?
細マッチョ?
健康的に動ける身体?
スポーツで活躍できる身体?
「大会に出たい!」という人なら、そこから逆算してトレーニング内容も食事も変わってきます。
つまり、目標によって、必要な刺激も方法も変わる。ということです。
【組織だと】
会社もまったく同じです。
「会社を成長させたい」だけでは、何をもって成長なのか分かりません。
売上を2倍にしたいのか。
社員を50人にしたいのか。
地域で一番選ばれる会社にしたいのか。
社員が長く働ける会社にしたいのか。
新しい事業を作りたいのか。
「どんな会社になりたいのか?」によって、必要な取り組みは変わります。
急速に会社を大きくしたいのであれば、採用や教育、仕組みづくりが必要になるかもしれません。
社員一人ひとりが長く活躍できる会社にしたいのであれば、健康管理や働き方、職場環境への投資が重要になるかもしれません。
地域に根付いた会社を目指すのであれば、顧客との関係や地域とのつながりが重要になるでしょう。
だから、「どうなりたい?」を最初に決める。
そのうえで、「じゃあ、今の自分たちには何が足りない?」と考える。
これは筋肉づくりも組織づくりも同じです。
筋肉と組織の成長を並べてみると
ここまでをまとめると、こんな流れになります。
| 筋肉の成長 | 組織の成長 |
|---|---|
| 新しい刺激を入れる | 新しい挑戦をする |
| 負荷がかかる | 大変な仕事・課題に向き合う |
| 適切に回復する | 休息・相談・支援を受ける |
| 栄養を補給する | 教育・情報・人員・承認などを得る |
| 適応して強くなる | 経験を組織の力に変える |
| 目標を決める | 会社のビジョン・目標を決める |
| 目的に合わせて鍛える | 目指す会社に合わせて施策を選ぶ |
こうして見ると、筋肉と組織の成長には共通する部分がたくさんあります。
そして、どちらにも共通しているのが、「負荷をかけるだけでは成長しない」ということです。
健康経営は「組織の回復力」を高める取り組みでもある
健康経営というと、「社員の健康を守るための取り組み」というイメージが強いかもしれません。
もちろん、それは間違いではありません。しかし、もう一歩踏み込んで考えてみると、
社員が仕事の負荷に適応し、回復し、長く力を発揮できる組織をつくること
とも言えます。
挑戦する。
負荷がかかる。
疲れる。
休む。
学ぶ。
支えてもらう。
そして、また挑戦する。
このサイクルが回ることで、人も組織も少しずつ強くなっていきます。
反対に、
「仕事の負荷は高い」
「でも人員は増えない」
「休めない」
「相談できない」
「教育もない」
「会社がどこに向かっているかも分からない」
となれば、いくら「頑張ろう」と言っても成長にはつながりにくいでしょう。
筋肉に、「もっと重いものを持て!」と言うだけでは筋肉は大きくなりません。
組織にも、「もっと頑張れ!」と言うだけでは強い組織にはなりません。
刺激、負荷、回復、栄養、目標。
この5つをバランスよく考える。
それが、人が長く活躍できる組織づくりにつながるのではないでしょうか。

まとめ
筋肉を成長させるときには、
「刺激を入れる」
「負荷をかける」
「回復する」
「栄養を取る」
「目標に合わせて鍛える」
という流れがあります。
組織も同じです。
新しい挑戦が組織を刺激し、困難を乗り越える経験が組織を強くする。
そして、その成長を支えるためには、休息や教育、人員、情報、承認などの「栄養」が必要です。
さらに、「自分たちはどんな会社になりたいのか?」という目標があることで、何に力を入れるべきかが見えてきます。
だからこそ、強い組織をつくることと、健康な組織をつくることは、別々の話ではありません。
人が健康に働き、挑戦し、回復し、成長できる。その積み重ねが、結果として組織の成長にもつながっていく。
身体を鍛えるときと同じように、「負荷をかけること」だけではなく、「成長できる環境を整えること」まで考えてみる。
これが、これからの組織づくりに必要な視点なのかもしれません。
運動プログラム作成のための原理原則|厚生労働省 e-ヘルスネット
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