「毎年ストレスチェックをしているけど、正直何のためにやっているんやろう?」
「結果を提出して終わり。会社から特に何も変わらない」
「やるだけやって、何も会社はしてくれへんやん」
こんな声が社員から聞こえてくる会社もあるかもしれません。ストレスチェックは、実施すること自体が目的ではありません。本来は、働く人が自分のストレス状態に気づき、必要に応じて医師の面接指導につなげること。そして、職場全体のストレス要因を把握し、働きやすい環境づくりにつなげることが大きな目的です。
つまり、
チェックする
↓
結果を確認する
↓
職場の課題を考える
↓
改善する
ここまで進めて、初めてストレスチェックを活かした取り組みになります。
また、現在では50名以上の事業場では必須ですが、
2028年(令和10年)4月1日より、50名以下の事業場でも義務となります。
今回は、ストレスチェック制度がなぜ始まったのか、会社にとってどんな意義があるのか、実施後に何をすればいいのかを解説します。
ストレスチェック制度はなぜ始まった?
ストレスチェック制度は、2015年12月から始まりました。
背景の一つにあるのが、職場におけるメンタルヘルス不調への対応です。
メンタルヘルスの問題は、症状が重くなってから対応するだけでは遅れることがあります。
休職が必要になる。長期間仕事を離れる。復職までに時間がかかる。
本人だけでなく、周囲の社員の業務負担も増える。
こうした状態になる前に、できるだけ早くストレス状態に気づくことが重要です。
ストレスチェック制度では、社員が自分自身のストレス状態を確認します。
ここで大切なのは、ストレスチェックが「会社が誰のストレスが高いかを調べるためのテスト」ではないことです。
本来の目的は、社員本人による気づきです。
「最近、かなりストレスがたまっているかもしれない」「仕事の負担が大きくなっている」「睡眠が取れていない」
こうした自分の状態に気づき、必要に応じて早めの対応につなげる。これが、制度の重要な目的の一つです。
また、ストレスチェック制度には、個人への支援だけでなく、職場環境の改善という目的もあります。
社員一人ひとりがどのようなストレスを抱えているのかを見るだけではなく、一定の集団として分析することで、
「この部署は仕事の量が多いのではないか」「上司からの支援を感じにくい職場なのではないか」
「役割が曖昧になっているのではないか」
といった職場全体の課題を考えることができます。つまり、ストレスチェック制度は、
個人への気づきと、職場環境の改善
この2つを目的としている制度です。

ストレスチェックは何を調べているのか?
ストレスチェックというと、「ストレスが高いか低いかだけを調べるもの」と思われることがあります。
しかし、実際にはもう少し広い内容を確認しています。一般的には、表のような事を確認します。
| 確認する内容 | 主な項目 |
|---|---|
| 仕事上のストレス要因 | 仕事量、仕事の難しさ、時間的な負担、職場環境など |
| 心身のストレス反応 | 疲労感、不安感、抑うつ気分、身体の不調など |
| 周囲からのサポート | 上司や同僚、家族などからの支援 |
| 満足度 | 仕事や生活に対する満足感 |
単に、「あなたはストレスがありますか?」と聞くだけではありません。
仕事の負担。仕事を自分でコントロールできている感覚。職場の人間関係。上司や同僚からの支援。心身に出ている反応。
こうした複数の要素から、現在のストレス状態を把握します。
ここで専門的に知っておきたいのが、ストレスの強さは仕事量だけで決まらないということです。同じ仕事量でも、
「自分で仕事の進め方をある程度決められる人」と、「仕事量は多いのに、自分では何も決められない人」
では、感じる負担が違うことがあります。
また、忙しい仕事であっても、上司や同僚に相談できる環境があれば、ストレスの受け止め方が変わることもあります。
そのためストレス対策では、仕事量を減らすだけではなく、
仕事の裁量、役割の明確さ、周囲からの支援など、さまざまな視点で職場を見ることが必要です。
会社にとって、ストレスチェックを実施する意味とは?
ストレスチェックの大きな意義は、社員の状態を「なんとなく」で判断しないことです。普段の職場では、
「最近、あの人元気ないな」「この部署は雰囲気が悪そう」
と感じることはあっても、それが個人の問題なのか、職場全体の問題なのかは分かりにくいものです。ストレスチェックを適切に活用すれば、職場の状態を一定のデータとして確認できます。
ここで特に重要なのが、集団分析です。
個人の結果だけを見るのではなく、部署や職場ごとの傾向を見ることで、
「特定の部署で仕事の量が突出していないか」「上司からの支援が低い部署はないか」「部署間で大きな差がないか」
といった課題を把握できます。ただし、人数が少ない部署では個人が特定される可能性があります。
そのため、集団分析を行う際には一定人数以上で実施するなど、個人情報への配慮が必要です。
また、集団分析の結果が悪いからといって、「この部署の管理職が悪い」と単純に判断することも危険です。
繁忙期が重なっている。人員が不足している。業務内容が大きく変わった。組織再編があった。
など、結果の背景を確認する必要があります。
大切なのは、点数を評価することではありません。「なぜこの結果になったのか?」を職場と一緒に考えることです。

実施から結果通知まで、会社はどう進める?
ストレスチェックは、実施方法にも重要なルールがあります。
まず、会社は実施者を定めます。
ストレスチェックの実施者には、医師、保健師など、一定の専門性を持つ人が関わります。
そのうえで、質問票を使って社員が回答します。紙だけでなくWeb上で実施する会社も増えています。
実施後は、回答をもとにストレスの程度を評価し、本人へ結果を通知します。
ここで特に注意したいのが、本人の同意なく、会社が個人の結果を見ることはできないという点です。
社員にとって、「ストレスが高いと答えたら、会社に知られて評価に影響するのでは?」
という不安があると、正直に回答しにくくなります。
そのため、制度への信頼を作ることが非常に重要です。会社としては、
「結果を人事評価には使わない」「本人の同意なく個人結果を取得しない」「結果は本人の健康づくりのために使う」
といったことを、実施前から分かりやすく伝える必要があります。
高ストレスと評価された場合には、本人が希望すれば医師による面接指導を申し出ることができます。
そして会社は、申し出があった場合に必要な対応を行います。
ただし、高ストレス者が何人いたかだけを見るのでは、ストレスチェックを十分に活かしているとは言えません。
本当に重要なのは、その後です。
一番大切なのは「実施後に会社が何をするか」
ここが、多くの会社で課題になりやすい部分です。
ストレスチェックを実施する。結果を本人に返す。高ストレス者には面接指導の案内をする。そして翌年まで何もしない。
これでは社員から、
「やるだけやって、何も会社はしてくれへんやん」
と思われても不思議ではありません。社員は、自分たちの回答に時間を使っています。
中には、普段は言えない本音を回答している人もいるでしょう。
それにもかかわらず、「結果は集計しました」で終われば、
「結局、会社は何のためにやっているの?」という気持ちになることがあります。
もちろん、すべての結果をそのまま公開する必要はありません。
また、集団分析の結果が悪かったからといって、すぐに大きな制度変更をする必要もありません。
まずは、結果を見ることから始めれば大丈夫です。
次に、原因を考える
そして、一つでも改善する
この流れを作ることが重要です。
集団分析の結果から、改善テーマを1つ決める
改善というと、「職場を全部変えなければならない」と考えてしまうかもしれません。
しかし、最初から大きな改革をする必要はありません。
仕事量の負担が高いなら、業務の偏りを確認する。
上司からの支援が低いなら、1on1や声かけの機会を増やす。
職場内のコミュニケーションに課題があるなら、情報共有の方法を見直す。
大切なのは、ストレスチェックの結果を見て、
「今年はこれを改善してみよう」というテーマを決めることです。
そして、翌年の結果を見て、変化を確認する。
これができれば、ストレスチェックは単なる年1回のイベントではなくなります。
結果を社員に「見える形で返す」
実施後に忘れてはいけないのが、社員へのフィードバックです。社員からすると、
「回答したけど、その結果どうなったの?」という疑問が残ります。
もちろん、個人の結果を公開する必要はありません。
しかし、全体として見えた傾向や、会社として今後取り組むことを共有することはできます。たとえば、
「今回の集団分析では、業務量に負担を感じている傾向が見られました」
「そこで、今年は業務の偏りを確認します」「管理職向けにコミュニケーション研修を行います」
といった形です。これだけでも、社員は、
「ちゃんと回答を見てくれている」と感じやすくなります。
さらに、「去年の結果を受けて、この取り組みを行いました」と翌年に伝えることで、ストレスチェックへの納得感も高まります。
社員の声を聞く。会社が改善する。また結果を確認する。
このサイクルができれば、ストレスチェックは職場づくりの大切なデータになります。
ストレスチェックは「社員を評価する制度」ではない
最後に、会社が必ず理解しておきたいことがあります。
ストレスチェックは、「ストレスに弱い社員を見つける制度」ではありません。
高ストレス者を探し出して、「この人は問題がある」と判断するためのものでもありません。
もし社員がそう感じれば、正直な回答は期待できなくなります。
ストレスが高いという結果には、本人の性格だけではなく、仕事の量、人間関係、組織体制、家庭環境など、さまざまな要因が関係します。
だからこそ、結果を個人の問題だけにせず、職場側にも改善できることはないかと考える必要があります。
企業ストレッチでは、ストレスチェックを健康経営の一部として考えることができます。
社員の状態を知る。職場の課題を知る。健康課題をもとに施策を考える。実施する。そして、また確認する。
このPDCAが回り始めると、ストレスチェックは「義務だからやるもの」から、「社員が安心して働ける環境を作るための情報」へと変わっていきます。

まとめ
ストレスチェック制度は、2015年から始まった制度です。
目的は、社員が自分のストレス状態に気づき、必要に応じて医師の面接指導につなげることだけではありません。
集団分析を活用し、職場環境を改善することも重要な目的です。会社として大切なのは、
- 実施前に目的や個人情報の取り扱いを説明する
- 個人の結果を本人の同意なく取得しない
- 高ストレス者への面接指導につなげる
- 集団分析から職場の課題を確認する
- 改善テーマを決めて実行する
- 実施した内容を社員へフィードバックする
ことです。特に気を付けたいのが、
「ストレスチェックをやったから終わり」にしないことです。
やるだけやって、何も変わらない。
社員がそう感じてしまえば、次のストレスチェックへの信頼も薄れていきます。
反対に、「前回の結果を見て、会社がここを改善してくれた」と社員が感じられれば、ストレスチェックは会社と社員の信頼を作るきっかけにもなります。
すべてを一度に改善する必要はありません。まずは、結果を見て、一つ変える。
その積み重ねが、社員の声を活かし、安心して働ける職場づくりにつながります。
企業ストレッチでは、ストレスチェックを単なる実施代行で終わらせず、結果から見えてきた課題を健康教育や職場改善につなげるサポートも行っています。
「毎年実施しているけれど、結果を活かせていない」
「集団分析を見ても、次に何をすればいいか分からない」
そんな企業こそ、ストレスチェックを健康経営の一つの材料として活用してみてください。
参考リンク
ストレスチェック制度について(労働者数50人未満の事業場)|こころの耳
企業ストレッチとは
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