ある旅人が、道を歩いていると、3人のレンガ職人が一生懸命レンガを積んでいました。
3人とも同じような仕事をしています。汗をかきながら、レンガを運び、積み上げています。
そこで旅人は、3人に同じ質問をしました。
「あなたは、何をしているんですか?」
すると、3人はそれぞれ違う答えを返しました。
1人目「分からない。ただ、言われたからやっています」
1人目は、少し面倒そうに答えました。
「何を作っているのかは、よく分かりません。
言われたからレンガを運んで、積んでいるだけです」
毎日同じ作業を繰り返す。今日もレンガを積む。明日もレンガを積む。
「何のためにやっているんだろう?」そんなことを考えることも、あまりありません。
仕事は、生活のため。給料をもらうため。それ以上でも、それ以下でもありません。

2人目「レンガの壁を作っています」
2人目は、こう答えました。
「レンガの壁を作っています」
自分の仕事が何なのかは分かっています。レンガを運び、決められた場所に、決められた方法で積む。
仕事をきちんと理解し、与えられた役割を果たしています。
「この仕事は必要な仕事だ」そう思っているかもしれません。
でも、「この壁が完成したら、何になるんですか?」と聞かれると、そこまでは分かりません。
3人目「教会を作っています」
3人目も、同じようにレンガを積んでいました。
ところが、旅人が、「あなたは、何をしているんですか?」と聞くと、3人目は顔を上げて、こう答えました。
「私は、教会を作っています」そして、続けました。
「この教会には、たくさんの人が集まります。ここで人々が祈り、家族が集まり、地域の人たちがつながっていく。
何十年、何百年と、この場所が残っていくかもしれません。私は、その場所を作っているんです」
やっている仕事は、3人とも同じです。レンガを運び、レンガを積む。でも、
「自分は何のためにこの仕事をしているのか」という意味づけは、大きく違います。
会社でも同じことが起こっている
これは、会社の仕事にも置き換えることができます。
例えば、製造業で考えてみましょう。「部品を加工しています」これは仕事の内容です。
では、
「その部品は、最終的に何に使われるのか?」
「その製品によって、誰の生活がどう良くなるのか?」
「自分たちの仕事が社会にどんな価値を生み出しているのか?」
ここまで見えているでしょうか。仕事の「作業」は分かっていても、仕事の「目的」まで共有されているとは限りません。ここが、組織づくりでは非常に重要なポイントです。
「何をするか」と「何のためにするか」は違う
仕事には、「何をするか」という側面があります。
そしてもう一つ、「何のためにするか」という側面があります。
例えば、「毎朝、機械を点検する」これは行動です。
しかし、その目的が、「機械の故障を防ぎ、安全に製品を作り続けるため」だと分かれば、同じ点検でも意味が変わります。
さらに、「安全で品質の高い製品を届けることで、お客様の仕事を支えるため」
まで見えてくれば、自分の仕事と社会とのつながりも見えてきます。
つまり、作業 → 役割 → 目的 → 価値
というところまでつながると、仕事の見え方が変わります。
では、健康経営は何のためにやるのか?
ここで健康経営について考えてみます。
「健康経営をやっています」と言っても、
健康診断を受けてもらう。
ストレッチをする。
健康セミナーを開催する。
ストレスチェックを実施する。
これだけでは、1人目や2人目のレンガ職人と同じ状態になってしまう可能性があります。
「会社から言われたからやっています」「とりあえず健康施策をやっています」
となってしまうからです。
もちろん、これらの施策は大切です。しかし、本当に重要なのは、
「なぜ、この会社は健康経営をするのか?」という目的です。
例えば、「社員に健康になってもらうため」だけでは、少し抽象的です。
その先に、
「社員が安心して長く働ける会社にする」
「一人ひとりが持っている力を発揮できる職場をつくる」
「健康上の理由で、やりたい仕事を諦める人を減らす」
「社員が安心して活躍できることで、会社の力を高める」
といった目的があります。ここまでつながってくると、健康施策は単なる福利厚生ではなくなります。
会社が目指す未来を実現するための取り組みになっていきます。
仕事の目的が見えないと、ストレスにもつながる
もちろん、仕事の目的が分からないことだけでストレスが発生するわけではありません。
仕事量、人間関係、裁量、評価、職場環境など、さまざまな要因があります。
ただ、「自分は何のために、この仕事をしているんだろう」
という感覚が強くなると、日々の仕事を「ただこなす」状態になりやすくなります。
同じ忙しさでも、「大変だけど、この仕事には意味がある」と感じられる場合と、
「何のためにやっているのか分からない。ただ終わらせるだけ」
と感じる場合では、仕事に向き合う感覚は変わります。だからこそ、健康経営を考えるときにも、
「ストレスを減らそう」だけではなく、
「そもそも、この会社で働く意味や目的が社員に伝わっているか?」という視点が重要になります。

エンゲージメントにもつながる
仕事の目的や、自分の仕事が誰かの役に立っているという感覚は、仕事への前向きな関わりにもつながります。
「自分の仕事には意味がある」
「自分の仕事が誰かの役に立っている」
「会社が目指している方向と、自分の仕事がつながっている」
こうした感覚があると、「言われたからやる」から、「この目的のために、自分もやろう」へ変わっていきます。
これが、組織のエンゲージメントを考えるうえでも大切な視点です。ただし、ここで注意したいのは、
「目的を伝えれば、みんながやる気になる」という単純な話ではないということです。
仕事量が多すぎる。
上司に相談できない。
人間関係が悪い。
評価が不公平。
自分で決められることが少ない。
そんな環境で「会社のビジョンを理解しましょう」と言われても、社員からすれば、
「いや、その前に働く環境を何とかしてほしい」となるかもしれません。
だからこそ、仕事の目的を共有することと、安心して働ける環境をつくること。
この2つをセットで考える必要があります。
会社が目指す「教会」を社員と共有する
3人目のレンガ職人は、「私は教会を作っています」と言いました。では、会社の場合はどうでしょうか。
経営者だけが「教会」を見ていて、社員には「レンガを積んでください」とだけ伝えていないでしょうか。
経営者は、
「この会社をこんな会社にしたい」
「お客様にこんな価値を届けたい」
「地域にこんな貢献をしたい」
という未来を描いている。
一方、社員は、「今日の仕事を終わらせる」「指示されたことをやる」だけになっている。
もしそうなっているなら、会社のビジョンと、社員の日々の仕事がつながっていないのかもしれません。
だからこそ、経営者が「何を目指しているのか」を伝えるだけでなく、
「あなたの仕事は、その未来にどうつながっているのか」まで一緒に考えることが大切です。
健康経営も「何をするか」から考えない
健康経営を始めるとき、「今年は何をやろう?」から始める会社は少なくありません。
ストレッチをしよう。
健康セミナーをしよう。
ウォーキングイベントをしよう。
食生活を改善しよう。
もちろん、具体的な施策は必要です。
でも、その前に一度、「私たちは、なぜ健康経営をするのか?」を考えてみてほしいと思います。
「健康診断の有所見率を下げるため」「健康経営優良法人に認定されるため」
だけではなく、
「社員が安心して働ける会社にするため」「社員が長く活躍できる会社にするため」
「一人ひとりの力を発揮できる組織にするため」「会社が目指す未来を、社員と一緒につくるため」
というところまで考えてみる。
そうすると、
「健康経営=健康施策をたくさんやること」ではなく、
「会社の目的を実現するために、人が安心して力を発揮できる環境をつくること」
という見方ができるようになります。

まとめ
3人のレンガ職人は、同じ仕事をしていました。
でも、「何をしているのか」という質問に対する答えは、それぞれ違いました。
仕事では、「何をするか」ももちろん大切です。
しかし、「何のためにするのか」が見えているかどうかも、とても大切です。
会社も同じです。社員に「健康になってください」と言うだけではなく、
「なぜ健康でいてほしいのか」「健康であることで、どんな未来を一緒につくりたいのか」
まで伝える。
そして、その目的に向かって安心して働ける環境を整えていく。
それが、健康経営を「やらされる施策」から「会社の未来をつくる取り組み」に変えていく一歩なのではないでしょうか。
あなたの会社では、社員に「何を作っていますか?」と聞いたら、どんな答えが返ってくるでしょうか。
イソップ寓話「3人のレンガ職人」に学ぶ、モチベーション高く働く従業員を育てるヒント
企業ストレッチとは
大阪府松原市を拠点にする企業ストレッチは、
「健康」を「組織の活力」につなげる、企業向けの健康経営をサポートする会社です。
ヘルスケア研修・体操教室・コンディショニングサポートなどの運動プログラムから、
健康経営優良法人の認定サポートまで、導入から定着・内製化までしっかり伴走。
「健康にイキイキと働ける職場づくり」をお手伝いします。