こんにちは!理学療法士・健康経営エキスパートアドバイザーのばたやんです。
先日、仕事中に重量物を移動していた際、誤って足の上に落としてしまいました。
「痛っ!」
足は大きく腫れ、歩くのも大変な状態に…。病院で診断を受けると「左第1趾末節骨骨折」でした。(足の親指です)
普段から「安全第一」「無理をしないことが大切です」とお伝えしている立場なのに、自分自身が労働災害を体験することになりました。
だからこそ今回は、重量物の取り扱いについて改めてお伝えしたいと思います。
重量物によるケガは、特別な仕事だけの話ではありません。
工場や建設現場だけでなく、介護施設、病院、物流、スーパー、飲食店など、あらゆる職場で起こっています。
重量物を扱う危険性
重量物による労働災害には、さまざまなものがあります。
・足の上に落として骨折や打撲
・腰を痛める(ぎっくり腰・腰椎椎間板ヘルニア)
・肩や首を痛める
・手指を挟む
・転倒や転落につながる
「少しだけだから」
「これくらい持てる」
この油断が事故につながります。
特に疲労が溜まっているときや、急いでいるときほど危険です。
私自身、「大丈夫だろう」と思った一瞬の油断が原因でした。
重量物による労働災害は意外と多い
厚生労働省の労働災害統計を見ても、重量物の運搬や持ち上げ作業は腰痛や転倒災害の大きな原因となっています。
特に製造業、運送業、介護・福祉施設では日常的に重量物を扱う機会があります。
腰痛はもちろんですが、
・荷物を落とす
・バランスを崩す
・指を挟む
・足の上に落とす
といった事故も少なくありません。
また、重量物によるケガは本人だけの問題ではありません。
休業や通院が必要になれば、他の社員の業務負担増加や残業増加につながります。
人手不足が続く中小企業にとって、一人のケガが職場全体へ大きな影響を及ぼすことも珍しくありません。
健康経営の視点では、重量物対策は安全衛生だけでなく、生産性向上や離職防止にもつながる重要な取り組みです。

なぜ重量物でケガをするのか
原因は「重いから」だけではありません。
実は次のような要因が重なることで事故が起こります。
- 無理な姿勢で持ち上げる
- 身体をひねりながら運ぶ
- 足元が見えない
- 滑りやすい床
- 荷物の重心が偏っている
- 一人で運ぼうとする
- 焦って作業する
- 移動距離が長い(導線)
つまり、重量物そのものよりも「作業環境」と「持ち方」が大きく影響します。
腰を守る正しい持ち方
重量物を持つときに最も大切なのは、腰ではなく脚の力を使うことです。
ポイントは5つあります。
①荷物にできるだけ近づく
腕を伸ばした状態では腰への負担が大きくなります。
荷物が身体の重心(おへそあたり)にある方が負担が少なく、荷物も軽く持てます。
荷物は身体に引き寄せて持ちましょう。
②膝を曲げる
腰だけを曲げるのではなく、股関節と膝をしっかり曲げます。腰を曲げると腰への負担が増大します。
スクワットのような姿勢(下の画像の様な姿勢)が基本です。
その姿勢が難しい場合は、片膝をつくと安定します。
③背中を丸めすぎない
完全に真っすぐである必要はありませんが、極端な猫背は腰への負担が増えます。
腰を丸めたまま身体を捻るのは身体への負荷が増大します。
④身体をひねらない
方向を変えるときは腰だけをひねるのではなく、足ごと向きを変えます。
⑤急に持ち上げない
ゆっくり力を入れ、反動を使わず持ち上げることが重要です。

どれくらいの重さなら危険?
「何kgから危険なの?」
この質問をよくいただきます。
実は、「〇kgまでは安全」という明確な基準はありません。
年齢や筋力、疲労、持ち方、作業時間によって負担は大きく変わるからです。
一般的には、
- 体重の10〜15%程度なら比較的負担は少ない
- 20%を超えると負担が増え始める
- 30%を超えると慎重な取り扱いが必要
と言われています。
例えば体重60kgの人なら、
- 約6〜9kg:比較的安全
- 約12kg:負担が増える
- 約18kg以上:一人で無理をしない
というイメージです。
ただし、床から持ち上げる場合や、前かがみになる場合は、さらに腰への負担は大きくなります。
「持てる重さ」と「安全に持てる重さ」は違うことを覚えておきましょう。
職場環境を整えることが最大の予防
実は、私が今回怪我をした原因の1つが
「普段、重たすぎて危険だから持たないもの」を社内で共有できていなかった事です。
新入社員の増えるタイミングで、すこしずつ教えていこう
というタイミングでした。
今回の持ち方の練習時に誤って「重たすぎて危険だから持たないもの」を持ってしまい、
落としてしまったという経緯です。
ケガは個人の注意だけでは防げません。
職場全体で環境を整えることが重要です。
例えば、
・台車を積極的に使う
・リフトや昇降機を導入する
・重い荷物は複数人で運ぶルールを作る
・保管場所の高さを見直す
・通路を広く確保する
・足元の滑りやすさを改善する
・定期的に持ち方を教育する
・持ち方を定期的に見直せる張り紙をする
こうした取り組みは腰痛予防だけでなく、労働災害全体の減少にもつながります。
健康経営の視点から見ても、安全な職場づくりは生産性向上や休業災害の防止に欠かせません。

年齢とともに高まるリスク
重量物によるケガは若い人だけの問題ではありません。
むしろ40代以降になると筋力や柔軟性、反応速度の低下によってリスクが高まることがあります。
特に製造業ではベテラン社員ほど重量物を扱う機会が多く、「今まで大丈夫だったから」という経験が油断につながる場合があります。
また、肩や股関節の柔軟性が低下すると、身体に近づけて持つことが難しくなり、腰への負担も増加します。
そのため職場では、
・筋力トレーニング
・ストレッチ
・体操
・作業環境改善
などを組み合わせて取り組むことが大切です。
私は企業でストレッチやコンディショニング指導を行っていますが、身体の使い方が変わるだけでも作業時の負担は大きく変化します。重量物対策は設備だけでなく、人への投資も重要なのです。
企業ができる重量物対策
企業としてできることは意外と多くあります。
例えば、
・重量物の重量表示を行う
・重量物の保管位置を見直す
・作業手順を標準化する
・持ち方教育を行う
・ストレッチや体操を導入する
・補助機器を活用する
といった取り組みです。
特に中小企業では「昔からこのやり方だから」という理由で改善されていないケースもあります。
しかし、労働災害が起きてからでは遅いのも事実です。
私自身が骨折を経験したからこそ言えますが、「大丈夫だろう」が一番危険です。
ぜひこの機会に、職場の重量物対策を見直してみてください。
まずはこの3つ!今日からできること
重量物を扱う際は、次の3つだけでも意識してみてください。
・「一人で持たない」
・「台車を使う」
・「腰ではなく脚で持つ」
たったこれだけでも、ケガのリスクは大きく減らせます。
まとめ
今回、私自身が重量物を足に落としてしまい、「自分は大丈夫」という思い込みが一番危険だと痛感しました。
労働災害は、経験や年齢に関係なく誰にでも起こります。
だからこそ大切なのは、気合いや根性ではなく、安全に作業できる環境と正しい身体の使い方です。
皆さんもぜひ、「これくらい大丈夫」と思ったときこそ一度立ち止まってください。
その一瞬の判断が、自分の身体を守り、一緒に働く仲間の安全にもつながります。
参考リンク
・厚生労働省 職場のあんぜんサイト
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/information/sokuhou.html
・厚生労働省 職場における腰痛予防対策指針
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31158.html