せっかく社員のみんなのためにと思って導入した健康づくりの制度が、現場で全く使われずに浮いてしまっている。そんな状況、本当に切ないですよね。動画を送っても、チラシを配っても、現場からは「忙しいから無理」という無言の抵抗が返ってくる。社長としては、みんなの体が心配だし、腰痛で欠勤が出るのも防ぎたい。その優しさや危機感は、実は今のままでも十分素晴らしいんです。ただ、ほんの少しだけやり方というか、仕組みのボタンを掛け違えているだけかもしれません。個人のやる気に頼らなくても、現場が自然と楽になる方法を、理学療法士の視点から一緒に考えていきましょう。
目次
1 なぜ現場の社員は会社が用意した健康習慣を無視するのか
2 腰痛や肩こりを放置することで企業が失う目に見えない巨額の損失
3 理学療法士が解説する身体の不調が脳の判断力を奪うメカニズム
4 現場の負担をゼロにして健康な職場を実現するための仕組み作り
1 なぜ現場の社員は会社が用意した健康習慣を無視するのか
製造現場を預かる経営者や人事担当者の皆様、毎日本当にお疲れ様です。社長が一生懸命になって、高い費用を払って健康管理アプリを入れたり、休憩室にマッサージチェアを置いたり、あるいは専門家が監修したストレッチ動画を配信したり。それなのに、実際にそれを使っているのは、もともと健康意識が高い一部の社員だけで、一番ケアしてほしいベテラン勢が知らん顔をしている。これって、実は製造現場では当たり前に起きてしまう現象なんです。
なぜ現場のみんなは動いてくれないんでしょうか。それは彼らがやる気がないからでも、社長を無視しているからでもありません。彼らにとって、健康づくりが仕事の合間にやる追加の宿題みたいに感じられているからなんです。製造業の現場は、常に納期と品質と戦っていますよね。決められた時間内に工程を終わらせる。その緊張感の中で、自分の体のメンテナンスに時間を使うのは、真面目な社員ほど申し訳ないと思ってしまうんです。一日の作業が終わったとき、社員の本音は、とにかく一秒でも早く帰って横になりたい、これ以上何も考えたくない、というものではないでしょうか。
また、長年現場を支えてきたベテランほど、腰が痛いのはこの仕事をしている以上、当たり前のことやと諦めてしまっています。痛みに耐えて、弱音を吐かずにラインを守る。それがプロやと思って頑張ってこられた。その姿は本当にかっこいいんですが、その美徳が逆に、自分の体をケアすることを、どこか恥ずかしいとか、自分だけサボっているように感じさせてしまっている。若手社員も、そんな背中を見て育つから、腰が痛いなんて言い出しにくい環境が、知らず知らずのうちにできあがってしまっているんです。

会社側が用意したメニューが、現場のしんどさとちょっとズレていることもありますよね。仕事が終わってからジムに行こうとか、家でアプリを見てストレッチしようと言われても、現場で体力を使い果たした社員には、それはもう無理難題に近いんです。彼らが本当に欲しがっているのは、追加の努力じゃない。今の作業がちょっとでも楽になること、そして明日も元気に現場に立てるという安心感なんです。個人のやる気に任せている限り、健康経営という言葉だけが浮いて、現場との溝がどんどん深まってしまうのは、ある意味で仕方がないことなんです。
私は理学療法士として、これまで多くの現場の社員さんとお話ししてきましたが、彼らが動かないのは拒絶しているんじゃなくて、自分の心と体を守るために必死に今のリズムを崩さないようにしているだけなんです。だからこそ、健康管理を特別なことじゃなく、機械のメンテナンスと同じように、当たり前の業務工程に組み込んであげることが大切になります。社長の想いを、現場が受け取りやすい形に翻訳して届ける。そこから始めていきましょう。
厚生労働省(SAFEコンソーシアム):腰痛予防体操
https://safeconsortium.mhlw.go.jp/anzenproject/concour/2018/sakuhin2/images/n043_1.pdf
2 腰痛や肩こりを放置することで企業が失う目に見えない巨額の損失
社員が腰痛や肩こりを抱えているのを、個人的な体調不良や老化のせいにして片付けてしまうのは、経営の面から見ると非常にもったいないことなんです。製造業にとって、社員の皆さんの体は、大切な資産ですよね。機械なら油を差したり、部品を替えたりしてメンテナンスをします。でも、人間の体は、不調があっても無理をさせて使い続けてしまいがちです。その結果、目に見えないところで、じわじわとお金が逃げていっているんです。
腰が痛い、肩が重いと感じながら作業している社員は、常にその痛みに意識を奪われています。これは、いわば脳のメモリの半分を痛みの処理に使ってしまっているような状態なんです。本当なら100の力で集中できるはずなのに、痛みというノイズのせいで、集中力が途切れがちになる。ネジを一本締め忘れる、数値を読み間違える、わずかな異変に気づかない。これらは本人の不注意ではなく、体が悲鳴を上げているせいで脳が働けなくなっているからなんです。一つのミスが製品の回収や、お客様からの信頼を失うことに繋がる怖さは、社長が一番よく分かっていらっしゃるはずです。

さらに怖いのが、取り返しのつかない事故のリスクです。腰痛のせいで踏ん張りが利かなくなったり、肩こりで首が回らなくなって視野が狭くなったりする。そんな状態で重いものを運んだり、複雑な機械を操作したりすれば、大事故が起きる確率は格段に上がります。一度でも大きな事故が起きてしまったら、その社員さんの人生はもちろん、会社が長年積み上げてきた社会的信用も一瞬で崩れてしまいます。特に人の少ない中小企業で、一人の熟練工が欠ける穴は、想像以上に大きい。代わりの人を募集しても、今の時代、なかなかすぐには見つかりません。
また、不調を抱えて働いていると、どうしても心に余裕がなくなります。自分自身の痛みで精一杯だから、後輩に優しく教えたり、周りと話し合ったりすることがおっくうになってしまう。これが続くと、職場全体がピリピリして、話しにくい空気が漂い始めます。新しく入った人がすぐに辞めてしまう、求人を出しても人が来ない。その原因を辿っていくと、実は社員のみんなが体を壊していて、職場に活気がなくなっていることだった、というケースを私はたくさん見てきました。
目に見える欠勤だけじゃなく、会社に来ていても本来の力が出せていない社員がいる。その損失を数値に換算すると、実は莫大な金額になります。理学療法士の目から見れば、現場のみんなが本来のポテンシャルの6割くらいでしか動けていないなと感じることがよくあります。残り4割を引き出すことができれば、特別な設備投資をしなくても、利益は自然と上がっていくんです。社員のみんなが笑顔で、元気に働ける環境を整えることは、経営者としての最強の投資なんです。
厚生労働省:職場における腰痛予防対策指針
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/130612-1b.pdf
3 理学療法士が解説する身体の不調が脳の判断力を奪うメカニズム
理学療法士として、これまでに何千人ものお体を診てきて確信しているのは、体の痛みは単なる感覚の問題ではないということです。物理的に、脳の働きをストップさせてしまうんです。製造現場では、どうしても中腰の姿勢や、同じ動作の繰り返しが多くなりますよね。そうすると、特定の筋肉がずっと緊張して硬くなり、周りの血管をギューッと圧迫します。血管が圧迫されると、血液の流れが悪くなる。特に、首や肩の筋肉が固まると、脳に酸素を送る大事なルートが狭くなってしまうんです。
酸素が足りなくなった脳は、ガス欠の車と同じです。特に、冷静な判断をしたり、感情をコントロールしたりする脳の部分が、真っ先に動きを鈍くします。だから、普段なら絶対にしないようなミスをしたり、ちょっとしたことでイライラしてしまったりする。これは社員の性格が悪いわけでも、やる気がないわけでもありません。単に脳が酸欠状態で、まともに動けていないだけなんです。午後になるとミスが増える、雰囲気が悪くなる。それは現場のみんなの脳が限界を迎えているサインやと思ってください。

さらに、内臓の疲労も見逃せません。ずっと同じ姿勢で固まっていると、内臓を支える筋肉もカチカチになります。そうすると、胃や腸が圧迫されて、本来の動きができなくなるんです。消化が悪くなれば、エネルギーが全身に回りません。朝から体がだるい、寝ても疲れが取れない。そう嘆く社員の多くは、内臓が窮屈な思いをしている可能性が高いんです。体に不快なところがあると、自律神経も乱れて、常に緊張状態が続きます。これでは夜もぐっすり眠れず、翌日のパフォーマンスはさらに落ちるという、負のスパイラルに陥ってしまいます。

理学療法士の知見を活かしたアプローチなら、このスパイラルを断ち切ることができます。特別なトレーニングは必要ありません。今ある体を、本来の設計図通りに動かせるように、ほんの少しだけ調整してあげる。それだけで、脳に酸素がたっぷり行き渡り、霧が晴れたように思考がクリアになります。姿勢を正し、血流を良くすることは、社員みんなの脳を再起動させることなんです。これができれば、作業のスピードも精度も、そして職場の話しやすい空気も、驚くほど改善されていきます。
会社のみんなの体が整うことは、組織としての脳が若返ることでもあります。新しい技術を覚えたり、改善案を出したりする意欲も、すべては健やかな体から生まれるんです。社員のみんなを、ただの労働力としてではなく、最高の結果を出してくれる大切なパートナーとして、そのコンディションを整えてあげる。それが理学療法士である私が、社長と一緒に取り組みたい健康経営の本質です。
協会けんぽ(福井支部):10秒間 肩こり・腰痛予防
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/shibu/fukui/assets/1undou_3.pdf
4 現場の負担をゼロにして健康な職場を実現するための仕組み作り
さて、具体的にどうすれば、現場のみんなが嫌がらずに、元気に働けるようになるのか。答えは簡単です。個人の努力に頼るのをやめて、業務の流れの中に体のケアを自然に組み込んでしまうことです。私はこれを、健康づくりではなく、品質を守るための身体点検と呼んでいます。機械の始業点検をするのと同じ感覚で、自分の体の調子を整える時間を、仕事の一環として定義し直すんです。
具体的には、一日の作業の中に、たった3分間だけ体をリセットする時間を設けます。これを、自由参加のストレッチにするのではなく、全員参加の標準作業にするのがポイントです。朝礼の直後や、午後の作業の切り替わりなど、理学療法士がその現場の動きを見て、最も疲れる部分を狙い撃ちした3分間の動作を決めます。これを全員でやることで、強制的に脳へ酸素を送り、体の緊張を緩めます。社員の皆さんは頑張る必要はありません。ただ、決められたルールに従って動くだけで、気づいたら体が軽くなっている。そんな仕組みを作っていくんです。

この3分間の内容は、現場ごとに変えるのが私のこだわりです。重いものを運ぶ現場と、細かな検査をする現場では、疲れ方が全然違いますよね。理学療法士が現場を歩き、みんなの動きをしっかり観察して、その現場にとって最高の処方箋を作ります。自分たちのために考えられた、たった数分の動きで体が楽になるのを実感すれば、社員の皆さんの目つきが変わります。会社が自分たちのしんどさを分かってくれている。その実感が、社長への信頼を深め、何でも相談し合える、話しやすい職場の土壌になっていくんです。
また、物理的な環境のちょっとした改善も大切です。道具を置く場所を数センチ変える、足元にクッション性の高いマットを敷く。これだけで、一日に何千回と繰り返す動作の負担が劇的に減ります。社員に我慢を強いるのではなく、環境の方を変えてあげる。そんな優しさが、結果としてミスを減らし、品質を上げることになります。理学療法士として、医学的な根拠に基づいたアドバイスを現場に落とし込んでいく。この積み重ねが、形骸化した健康経営を、利益を生む仕組みへと変えていくんです。
私の仕事は、単に体操を教えることではありません。社長の熱い想いと、現場の社員のみんなの健康を繋ぎ合わせる、橋渡し役になることです。みんなが楽に働けて、笑顔が増えて、気づいたら業績も上がっている。そんな理想の工場を、一緒に作っていきましょう。一人で悩まなくて大丈夫です。これからは理学療法士の私が、御社のパートナーとして伴走させていただきます。社員の皆さんが、この会社で働けて良かったと心から思える。そんな未来を、今日ここから始めてみませんか。
厚生労働省(SAFEコンソーシアム):腰痛改善ストレッチ
https://safeconsortium.mhlw.go.jp/anzenproject/concour/2016/sakuhin3/images/n288_1.pdf
現場の疲れや、せっかくの制度がうまく回っていないモヤモヤ、まずはそのまま私にぶつけてください。
現場のみんなの体と心を軽くするために、理学療法士の視点で御社にぴったりの改善策を一緒に考え、形にしていきます。
社員も会社も、みんなが笑顔になれる健康経営を、一歩ずつ進めていきましょう。